! この記事は2015/3に執筆したもので情報が古い可能性があることにご留意ください
IS(イスラム国)の存在が世界を震撼させています。
近年急速に勢力を伸ばしつつあるこの組織ですが、そもそも何が目的なのでしょうか?
組織勢力の実態や現況、これまでの経緯、他のイスラム教徒との信条の違いなど、細やかな情報まで把握している人は少ないと思います。
とはいえインターネットを覗くと、随分とその情報も錯綜している感があり、真偽を確かめるためにさらに掘り下げて調べたりするうちにいつの間にか迷宮入りしてしまったり。
なかなか求めるような答えに辿り着けないケースも多々あるかと存じます。
この先も彼らは頻繁に残虐な事件を起こすなどして、我々を恐怖に陥れることでしょう。
メディアの流す情報に踊らされ、恐怖に慄くだけでなく、ある程度明確な理解を得た上での危機意識、プロパガンダに支配されないリテラシーを持つことは、東京オリンピックを控える今後の我々日本人にとって非常に大事なことだと考えています。
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Index
ISって何?
当記事は、ジャーナリストの池上彰さんのお話やWikipediaからなるべく最大公約数的な情報を元として、平易ににまとめてみたつもりです。何かの参考になれば幸いです。
それでは早速以下からアウトラインを抑えていきたいと思いますが、まずは「宗教」としての視点から両者の関係性を示します。
ISの存在のおかげで迷惑を被っているイスラム教徒
まず日本における「イスラム国」という呼称ですが、これ自体が誤解を招くものとして、主にイスラム教徒の方達から非難されている事実があるようです。
まず「国」というのは彼らが勝手に「国」の樹立を宣言しただけであり、世界各国はどこも正式な国家として認めているわけではありません。
また「イスラム」というのも、彼らは「カリフ」といってムハンマドの後継者、つまり正統な血脈を継ぐ団体として「カリフ制」の実践や、聖典コーランの厳格な解釈を元とする原理主義としてのスタイルを標榜しているようですが、「あのようなものと一緒にされては困る」といって迷惑を被っているイスラム教徒の方が多々おられるようです。いわゆる風評被害でしょう。
勝手な「正統派」宣言。
カリフ制とは、第一次大戦によりオスマン帝国ともに完全に消滅してしまったそうで、以降は極めて具体性の乏しい「理想国家」という概念でしかなかったようです。
ところがイスラム国はあたかも「それをやってのけた」かのようにあざとく喧伝しているそうなのです。
だからといって勿論、それを素直に認めるイスラム教徒ばかりではなく、中でも、反米テロ組織アルカイダなどはそのことについて反対する姿勢を見せています。
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期待とは裏腹。「こんなのイスラム教じゃない!」
実際に、理想国家の顕在を信じて、他国から戦闘員として加わったイスラム教徒の中には、「実際の教えとはかけ離れている」と幻滅するケースなどがあるようです。
繰り返し行われている残虐な殺戮全てがイスラムの信条に基づいた行為であるかといえば、全くそのようなことはないことの証左ですね。
なんとIS(イスラム国)の戦闘員の所持品から麻薬や注射器が確認されているようです。
クルド人武装勢力の兵士の証言によれば「捕虜になった戦闘員の中には、数時間後正気に戻ったとき自分の居場所さえ分からなかった奴もいた」とのこと。
つまりやっていることの実態は恐怖による支配と洗脳であり、
他の多くのイスラム教徒からしてみれば、イスラム教を利用したテロ組織であり、イスラム教を「詐称」した団体だと見なされているのです。
かのオウム真理教の教えは仏教が土台ですが、IS(イスラム国)のような過激派の存在をもって「イスラム教徒=危険な存在」と認識してしまうのは非常に短絡的であり、多くの穏健なイスラム教徒に対して失礼だという理解は最低限必要ですね。
彼らの目標。
当面の目標として、過去にイスラムに縁のあった土地を取り返すことを掲げ、その地域は西はスペイン、東は中国、インドネシアまでという広範に及び、ゆくゆくは世界中の人々をイスラム教に改宗させようとしているようです。
しかし、それは彼ら独自のイスラム教観念の強引な押し付けでしかなく、他のイスラム教徒が認める布教とは到底言い難い、全くかけ離れた所業だと言えるでしょう。
次に経済的側面や、成り立ちの背景などについて説明していきたいと思います。
現在IS(イスラム国)は、首都(中心都市)はシリア北部の「ラッカ」と定め、宗教警察の巡回、路上での死刑執行などといった、独自の統治を行なっています。
更には防衛省や保健省、電気省などを設け、閣僚を置き、インフラ整備を進め、現地住民を取材した情報によれば、地元住民からは暮らしやすさといった面でアサド政権時代よりも支持を得ているのが実情で、本格的な国づくりが着々と進められているのです。
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超金持ちテロ集団。
ISは「世界で最も裕福なテロ集団」と言われており、潤沢な資金があるからこそこのようなことができるのです。
総資産額はなんと日本円にして約2千億円に上り、占拠している油田からとれた原油を密輸することで一日2億円程度の現金収入があると言われています。
おまけに使用している武器はアメリカの最新兵器です。
どのようにしてこのような武器や資金を手中に納めたのでしょうか?
ザッと現在までの経緯を探ります。
IS(イスラム国)は元々アルカイダ系の組織
この組織は元々アルカイダ系の組織だったようです。
チュニジアがキッカケで起こった「アラブの春」という一連の民主化運動によって、イスラム独裁政権は次々と倒され崩壊していきました。
イラクでもアメリカの参入によって、フセイン政権が終焉を迎え、その後行われた選挙によって、新たにマリキ政権が発足します。
スンニとシーア
フセインはイスラム教でも「スンニ派」で、マリキは「シーア派」です。
因みにこの「スンニ派」と「シーア派」ですが、イスラム教では基本的にこのどちらかの派閥に二分されると考えて良いようです。
イスラム教徒全体の割合ではスンニ派が9割と圧倒的に多いものの、イラクに限ってはシーア派人口の方が多いとのこと。
双方の違いについてですが、スンニ派とは「慣行(スンニ)」や「教え」を重視していて、シーア派は「血統」つまり「誰が統治者」を重視しているそうですが、本人達の差別化意識については地域、個人によって異なるようですね。
ISの勢力拡大に伴う、一連の経緯。
話を戻すと、フセイン政権下では、軍人や政府関係者などは「スンニ派」で固められ、シーア派を虐げるような政策の傾向性がありました。
ところが政権がマリキに替わると、今度は逆にスンニ派を虐げる政策へと一転します。
フセイン政権下で働いていたスンニ派の元軍人達は、次第に武装勢力と化し、そこにマリキ政権に不満をもつシーア派たちも共鳴して、徐々に今のイスラム国の原型となる団体が出来上がってきます。
そして、この勢力は一旦シリアに拠点を移します。
シリアでは民主化運動に賛成していた金持ちのサウジアラビアやカタールから資金援助を受けていたシリアの反政府勢力(自由シリア軍、シーア派)と、アサド政権が熾烈に争っていました。
彼らISは反政府勢力に参戦して、アサド政権と戦う姿勢を見せましたが、突如裏切り、かえって反政府勢力を攻撃し、金と武器をぶんどったのです。
武器や資金を調達した彼らは再びイラクへ戻り、銀行(何百億円)や油田(十カ所以上と言われている)を瞬く間に制圧。
アメリカがイラクから撤退する際に、アメリカ製の最新鋭の武器と鍛え上げられた屈強な兵士を残していきましたが、ISがやってくると彼らは武器を置いて民間人に紛れ、さっさと逃げてしまったのです。
イラク軍が逃げた理由。
その原因には主に2つの理由があります。
一つは、ISが制圧した北部地域は、元々スンニ派の地域だったのです。
マリキ政権はシーア派で、そこにいた兵士たちの多くもシーア派ですから、彼らにとってスンニ派の地域を命がけで守る理由がありません。そもそも北部地域は兵士の配置が手薄であったとも言われています。
二つには、マリキの統率力がなく、軍の中が腐敗、弱体化しているという実情です。
以上が、ISの現在に至るまでの大まかな経緯となります。
もっともこれら中東の状勢はどんどん複雑化しているので、実際にはこのような単純なものではなく、様々な裏事情がありそうですが…
今も尚、世界中から戦闘員を集めている。
今もIS勢力はとどまることを知らず、
戦闘員は日々、増加しているようです。
これは思想的な背景によった人集め以外にも、経済力にモノを言わせて世界の失業者に対し、高額な給与をチラつかせているからなんですね。
兵士の国籍は70か国。戦闘員の4割が外国人だというのだから驚きです。
現在、彼らを殲滅させるための直接的な手段はないにしろ、資金流入の経路を絶ったり、戦闘員をこれ以上増やさないようにする等。決して国家としての軍事介入などではなく、どこまでも平和的な解決への取り組みに期待するばかりですね。
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