アメリカの大統領予備選挙は、いよいよ天王山の局面を迎えようとしています。
やれ、サンダース氏が追い上げているとか、ヒラリー・クリントン氏が大差つけてるとか、
情報が錯綜していて、詳細な現況については判りかねますが、何やら候補各者の支持は拮抗し、白熱した様相を呈しているようですね。
そのような最中、先般2月18日にある事案が発生。
聖・政界におけるビッグネーム、「フランシスコ法王」と、米大統領候補「ドナルド・トランプ氏」の間に生じた「宗教観のズレ」が、双方の衝突を招き、
世間の耳目を集めるニュースへと発展しました。
少々、ネタの鮮度は古いですが、宗教の在り方を考える上で大変、示唆に富んだ内容なので、
この度、その話題に便乗してみたいと思います。
ということで、まずは両者間で、どのようなやり取りが展開されたのか、振り返ってみましょう。
以下、各メディアのニュースソースになぞらえて(出来るだけ事実に基づいて)創作したパロディーです。
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ローマ法王とトランプ氏のやり取り(マイルド風刺)。
[speech_bubble type=”ln” subtype=”L1″ icon=”トランプ.jpg” name=”トランプ氏”]不法移民の流入に歯止めがかからないから、いっそ米・メキシコ間に「壁」を作っちゃおうと思ってる。[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”ln” subtype=”R1″ icon=”ローマ法王.jpg” name=”ローマ法王”]ちょっと待ちたまえ。果たして、善良なカトリック教徒はこの男を支持するだろうか?彼の判断は人の領域をお踏み外している。[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”ln” subtype=”L1″ icon=”トランプ.jpg” name=”トランプ氏”]えっ?[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”ln” subtype=”R1″ icon=”ローマ法王.jpg” name=”ローマ法王”]人はお互いに架け橋を築こうとするものだ。だが彼が築こうとしているのは「壁」である。彼はクリスチャンではない。そのようなものは福音ではない。そう私は断言する。[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”ln” subtype=”L1″ icon=”トランプ.jpg” name=”トランプ氏”]何だ何だ!?教皇だって政治家じゃん。彼は我が国で発生している問題について理解できてないんだよ。[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”ln” subtype=”L1″ icon=”トランプ.jpg” name=”トランプ氏”]だいたい、教皇がメキシコの国境まで行ってメキシコにウケるような発言をするってのは「金儲け」が目的なんじゃないの?[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”ln” subtype=”R1″ icon=”ローマ法王.jpg” name=”ローマ法王”]ぬぅ…。[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”ln” subtype=”L1″ icon=”トランプ.jpg” name=”トランプ氏”]もしバチカンがISによって攻撃を受けたら、きっと教皇は「僕が大統領だったら良かったのに」って思うはずだよ。[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”ln” subtype=”L1″ icon=”トランプ.jpg” name=”トランプ氏”]宗教指導者たるもの。特定の人の信仰を疑うのは恥ずべきことだ![/speech_bubble]
[speech_bubble type=”ln” subtype=”R1″ icon=”ローマ法王.jpg” name=”ローマ法王”]これ、私が言ったわけではないが、そなたは過去、共和党で指名を争うテッド・クルーズ氏を指して「こんなに嘘つきで不誠実な人が本当にキリスト教徒なのか?」と疑った件については都合良く忘れているという批判が聞こえてくるのだが。いかがなものか?[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”ln” subtype=”L1″ icon=”トランプ.jpg” name=”トランプ氏”]‥‥。[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”ln” subtype=”L1″ icon=”トランプ.jpg” name=”トランプ氏”]‥、ならこちらからも言わせてもらおう!教皇のコメントには驚きだね。なぜならバチカンは100%巨大な壁で囲まれているのだから。[/speech_bubble]
ブーメラン乙!
いやぁ、お二人とも、ブーメラン飛ばしがお上手。
せっかく、ローマ法王が交代して以降、種々の懸案事項改善への期待が高まっていたようですが、
今回の発言によって味噌を付ける格好になってしまいました。
ちなみにトランプ氏による、バチカンの巨大な壁への反論は、彼のソーシャルメディア・ディレクター、ダン・スカヴィーノ氏のTwitterへの投稿が発信源で、
以下がそれです。
Amazing comments from the Pope- considering Vatican City is 100% surrounded by massive walls. pic.twitter.com/g3iVLDVGe5
— Dan Scavino (@DanScavino) 2016年2月18日
「バチカンは100%、巨大な壁に囲まれているのに、法王のコメントは驚きだ。」
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教皇が放った、もう一投分のブーメラン
フランシスコ法王が自らの住環境を棚に上げて、トランプ氏の発言を批難した姿は滑稽でした。
ところで皆さん、教皇が投げたブーメランは一投ならず、
更に「もう一投分」放っていることはお気づきになられましたでしょうか?
それはつまり、
この発言によって、ローマ法王自身も、トランプ氏との間に壁を作ってしまっている。
ということです。
「吐いた唾は呑めぬ」
教皇は、思わぬところで手痛いペナルティーを負ってしまいましたね。
なぜ「パロった」のか?
ところで、僕はローマ法王やトランプ氏を単にディスりたいというわけではなく、
宗教界の最高指導者いえども、人間なのだから、発言の誤りくらいはあるよ、ってことを伝えたかったんです。
つまり、まともな教団営為を維持していく上で、最も大事なのは、
信者が「おかしいことはおかしい」と憚りなく主張できる環境作り、
また、それを寛容な態度で受け入れる、指導者側の体制。
そういった「聖俗関係の良好化」ではないかと思うわけです。
カルト化?の条件
およそ宗教団体の「カルト化」という現象は、指導者への過剰な尊敬によって、絶対性、無謬性が強調されていく過程なのでしょう。
その結果、教祖の権威によって正当化された、不条理な命令は、個人の正常な倫理観を破壊し、
潜在的可能性を奪取します。
ただし、その流れに唯々諾々と追従する「信者側」についても、片棒を担いでしまっている以上、決して清廉潔白、無辜の人であるとは言い難いわけです。
というのは、その教祖なり、教団の執行部を支えているのは、紛れもなくその信者であって、
おかしいことをおかしいと主張する気概もない愚鈍な信者の存在無しに、教祖や、執行機関は、その地位を確立することはできないからです。
自団が周囲から「カルト」と呼ばれることを不当に思うのなら、横車を押すように、教団の意義の正当性ばかりを主張するのではなく、
指導者を擁護する発言に終始するばかりではなく、
自団の「過ち」もちゃんと認めましょう。
自分自身を許すことができない内から、他人に許しを与えることなど出来ようがありません。
そう思いませんか?エホバの証人の各々方。
カトリックを嗤う前に、自分達の足元を確認する方が先なのかもしれません。
もういっちょ、ブーメラン!
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バランスが大事だよね。
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」と言いますが、
宗教団体の「カルト化」を防ぐために必要なのは、
指導者の「適度な自意識」と、信者の「適度な尊崇」という関係のバランスを保持することだと思います。
双方が努めて、協力的、意識的にそういった空気を作り上げていくこと、
バランスが傾いた場合に調整を図る機能は、あまねく、組織に属する一人一人の平素の修養にかかっているのだと思います。
指導者の高慢に対し、信者側が抑止力を発揮できる気概。
反対に、信者の蛮行を指導者が制止できるような信頼の構築。
常より、インターナルな対話の場を設け、指導者が信者の心に寄り添えるような環境作りが、健全な教団営為を保っていく秘訣ではないかと、僕なんかは思います。
ライン風の、台詞を吹き出しで表現したトランプ氏と法王のやり取り図が、とても読みやすかったです。相変わらずスタイリッシュですな。(^O^)b goo!!