当ブログでしばしばご紹介している島田裕巳先生の著書。
こちらは既に初版から10年近い年月が経過していますが、
それぞれの教団の特徴や歴史、また教義的な部分を含めて俯瞰することができるので、
日本の新宗教を概略的に知る上で、大変有用な一書となるはずです。
タイトルでは「宗教」と表記しましたが、厳密には「新宗教」です。
ではどうぞ。
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Index
島田裕巳先生がセレクトした【10】の教団「一覧」
1、天理教
2、大本
3、生長の家
4、天照皇大神宮教と璽宇
5、立正佼成会と霊友会
6、創価学会
7、世界救世教、神慈秀明会と真光系教団
8、PL教団
9、真如苑
10、GLA
新宗教と現代社会の密接な関わり。
既に良く知られたものばかりですね。
個人的には「大本」や、「天照皇大神宮教」などについてはあまり知識がなかったので、非常に参考になりました。
「真如苑」が流行ったのは記憶に新しいです。実家のすぐそばに大きな施設が建ち、当時信者さんたちが大挙して詰めかけていました。
「創価学会」などは言うまでもなく現在の社会に非常に大きな影響を与えています。
「PL」といえば高校野球ですが、どのような宗教かご存知でしょうか?
また「生長の家」の教祖は某スーパーの創設者です。
こうして列挙してみると、現代社会はこれらの教団の影響を多分に受けて成立しているのだと改めて実感しますね。
「宗教」と「新宗教」と「新新宗教」。
ちょっと本の内容からは外れますが、「宗教」の区分についてざっとお話したいと思います。
上に列記した「新宗教」ですが、これは主に幕末から明治にかけて発生した教団に分類され、
「黒住教」などはそのはしりとされています。
そもそも「宗教」という概念自体が明治以前にはなく、
もちろん「仏教」「神道」という概念も存在しなかったようです。
これはキリスト教の布教が初めて認可された明治以降だとされており、
それまでは「神仏習合」といわれるように、共存、一体化されており、またそれが社会通念として遍く一般化されていましたから、
あえて個別に定義する必要性がなかったことが分かります。
これだけ多くの新宗教が発生した大きな要因として、
日本がそれまで独自に醸成してきた閉塞的な文化に「自由」という西洋からの新風が吹き込んだことが挙げられると思います。
ちなみに、オウム真理教など特に新しい教団については「新新宗教」と区別して呼ばれる場合があるようです。
当ブログにてメインテーマで取り扱っている「顕正会」についても、
平成になってから、勢力を伸ばしてきているし、
教義的な側面からみても、同じ大石寺系で創価学会と比較した場合では、類似性が失われてきているので、
「新新宗教」の括りにカテゴライズして良いかもしれません。
時代の大きな変わり目には多様な思想、そしてそれが実践的に組織化された教団が多く発生することは、
武家中心の社会に変革を遂げた「鎌倉時代」にそれを見ることができますね。
「宗教」が「新宗教」を生む連鎖的な性質。
立正佼成会といえば、日本の新宗教を代表する一つといっても過言ではない「マンモス教団」です。
基本は「法華信仰」。涅槃行にウエイトを置き、原始仏教も添加されているようですが、詳しい教義については僕は良く知りません。
大乗と原始仏教。なんだか水と油のようなものだと思うのですが…。まぁそれは一旦置いといて、
とにかく、これだけデカい教団だと、二世、三世も膨大な人数になってくるのだろうと思います。
そういったコミュニティーで培われたイデオロギーが、「文化」を形成し、やがて社会に違和感なく馴染んでいくならば、
もはやそれは「新宗教」というより、実質的には「宗教」としての存在意義を有するようになり、
それを土壌に、また新たな「新宗教」が発生します。
そもそも、立正佼成会自体が霊友会から派生したものであり、その親である霊友会にも当然黎明期がありました。
更に掘り下げていけば、日蓮の法華信仰というものも教義体系は特に佐渡配流以降、独特なものがあり、鎌倉時代においては目新しいものだったのでしょう。
また、仏教伝来の飛鳥時代には、仏教自体が日本人にとって極めて異質な「新新宗教」に映ったはずです。
もっと遡れば大乗仏教が当時宗教改革によって派生した全く新しい潮流です。
カトリックがプロテスタントを生んだ「ルター」による西洋の宗教改革に似ています。
仏教ではその遥か前に宗教改革が起こっているのです。法華経はそのとき成立しました。
大乗仏教はヒンズー教の影響を多分に受け、
変容を遂げながら日本にやってきます。
日本仏教では一般的な「悉有仏性」(しつうぶっしょう)と文字通り、衆生であればことごとく仏性が内在しているという考え方は、
日本伝来以前の大乗仏教の「唯識説」からは到底考えられないのです。
では大元は釈迦なのか?仏教の前は?
「宗教文化」が「新宗教」を生み、
「新宗教」がやがて「宗教文化」となり、そこからまた「新宗教」を生む。
起源を辿っていけば大元は「釈迦」でしょうか?
いや、釈迦も決して「大元」とは言い切れません。
悟りのバックグラウンドにはヴェーダの宗教がありました。
釈迦は悟ってすぐに先生の「バラモン」たちへ挨拶に行くのです。(既に亡くなっている)
ではヴェーダの宗教の親は何でしょうか?
教義的な考察を離れ、「文化」を見る。
こうして通史的にみていくと、教義的側面より、それぞれの宗教が生み出した「文化」こそが、
もっとも重要であり、エッセンスなのだということに気付かされます。
「文化」が「文化」を生み、その主体は人間です。
人間が「文化」を作り、僕たちはその中に「今」を生きています。
日本で発生した代表的な「10」の教団。
僕たちの住む「今」を作ったこれらの宗教は、それぞれのどのような教祖によって、どのような経緯で形成されたのか。
教養を深め、文化的、より人間的な思考に資する情報材料として、是非、一読してみてはいかがでしょうか。
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